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クラミジア予防法とは?感染リスクを減らす効果的な対策と知識を解説
性の健康について不安を感じている方は少なくないでしょう。特にクラミジアは若者を中心に蔓延し、自覚症状が乏しいため気づかないうちに感染が広がっています。放置すると不妊症など深刻な合併症を引き起こすリスクもあるため、適切な予防と早期発見・治療が重要です。
この記事では、クラミジアの感染リスクを減らす効果的な予防法と正しい知識を詳しく解説します。コンドームの正しい使用法や定期検査の重要性など、具体的な対策を学べば、あなたとパートナーの健康を守ることができます。
クラミジアは早期発見・早期治療が可能な病気です。この記事を読んで、安全な性生活を送るための知識を身につけましょう。
クラミジア感染のリスクと主な症状
クラミジアは性感染症(STI)の中で最も一般的な感染症の一つです。この感染症は若い世代や性的に活発な人々の間で広く蔓延しており、自覚症状が現れにくいことが特徴です。そのため、感染に気づかずにパートナーに感染を広げてしまうケースも少なくありません。
適切な検査と治療を受けずに放置すると、将来的に不妊症などの深刻な合併症を引き起こすリスクがあります。
クラミジアの感染経路と感染源
クラミジアは、クラミジア・トラコマティスという細菌によって引き起こされます。この細菌は感染者の体液(膣分泌液、精液、尿道分泌液など)に存在し、性行為を通じて口、性器、肛門などの粘膜に接触することで感染します。
主な感染経路は以下のとおりです。
・膣性交
・肛門性交
・オーラルセックス
感染源は、クラミジアに感染している人です。自覚症状がなくても感染している可能性があるため、過去の感染歴が不明な相手や複数の性交渉相手がいる場合は特に注意が必要です。
米国疾病管理予防センター(CDC)の報告によると、2019年には約180万件のクラミジア感染症例が報告されており、これは報告された性感染症の中で最も多い数字です。また、15〜24歳の若者が新規感染の約半数を占めているとされています。
クラミジア感染の主な症状
クラミジアは「サイレント・ディジーズ(静かな病気)」とも呼ばれ、感染しても自覚症状が現れないことが多くあります。症状が現れても比較的軽いことが多いため、他の病気と勘違いしたり、風邪のような症状だと自己判断してしまったりして、感染に気づかないケースも多いです。
主な症状を以下に記載しています。
性別 | 症状 |
男性 | ・尿道からの膿の分泌 ・排尿時の痛み ・精巣の痛みや腫れ |
女性 | ・おりものの量の増加 ・おりものの色や臭いの変化 ・下腹部痛 ・性交時の痛み ・不正出血 |
これらの症状は他の病気でもみられることがあるため、注意が必要です。例えば、尿道炎はクラミジア以外にも淋菌やトリコモナスなどの感染症でも起こることがあり、おりものの変化や下腹部痛は膀胱炎や子宮筋腫などの病気でもみられます。
世界保健機関(WHO)の推計によると、2016年には全世界で約1億2700万人がクラミジアに感染していたとされています。また、感染者の多くが無症状であることから、実際の感染者数はさらに多い可能性があります。
クラミジアの検査と治療
クラミジアは早期発見・早期治療が必要な病気です。ここでは主な検査方法と治療について紹介します。
クラミジアの検査方法
クラミジアの検査は、尿検査やおりもの、尿道分泌液などを採取して行います。医療機関を受診すれば、これらの検査を受けることができます。主な検査方法は以下のとおりです。
・尿検査
・おりものや尿道分泌液の採取:綿棒を粘膜に軽くこすりつける
これらの検査方法は比較的簡単で、痛みもほとんどありません。検査結果は通常、数日から1週間程度で判明します。
米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、性的に活発な25歳未満の女性と、それ以上の年齢でもリスクが高い女性に対して、毎年のクラミジアスクリーニングを推奨しています。また、妊婦や高リスクの男性に対しても検査を推奨しています。
クラミジアの治療法と治療期間
クラミジアと診断された場合、抗生物質の内服薬によって治療します。治療期間は通常1〜2週間程度です。処方された薬は医師の指示に従って最後までしっかりと服用することが重要です。
治療の有効性について、イギリス国民保険サービス(NHS)によると、適切な抗生物質治療を受けた場合、クラミジア感染症の治癒率は95%以上とされています。しかし、治療を中断したり、不適切な治療を受けたりすると、耐性菌の出現や再感染のリスクが高まる可能性があります。
クラミジアは早期発見し適切な治療を受ければ、後遺症のリスクを減らすことができます。定期的な検査と適切な予防措置を心がけ、性の健康管理に努めることが重要です。
治療薬の種類と特徴
クラミジアの治療には主に3種類の抗生物質が使用されます。それぞれの特徴と治療の流れについて、最新の医学的知見に基づいて解説します。
以下に、クラミジアの治療に用いられる3つの治療薬とその特徴を紹介します。
アジスロマイシン(商品名:ジスロマック)
・服用方法:1回1,000mg(通常4錠)を単回服用
・特徴:1回の服用で治療が完了するため、服薬コンプライアンスが高い
・副作用:下痢(3〜6%)、腹痛(2〜3%)、吐き気(2〜3%)、嘔吐(1〜2%)
ドキシサイクリン
・服用方法:1回100mgを1日2回、7日間服用
・特徴:長期間の服用が必要だが、幅広い細菌に効果がある
・副作用:胃腸障害(4〜8%)、光線過敏症(1〜3%)
レボフロキサシン(商品名:クラビット)
・服用方法:1回500mgを1日1回、5〜7日間服用
・特徴:クラミジア以外の細菌にも効果があり、尿路感染症などの合併症にも有効
・副作用:下痢(1〜5%)、吐き気(1〜3%)、食欲不振(1〜2%)
副作用が現れた場合は、直ちに医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
治療の流れ
クラミジアの治療の流れは以下のとおりです。
1.診断、薬の処方
診断後、医師の判断により上記3種類の抗生物質のいずれかが処方されます。アジスロマイシンは1回の服用で治療が完了するため、特に若年層や服薬管理が難しい患者に適しています。
2.服薬治療
処方される抗生物質の服薬期間は以下のとおりです。
・アジスロマイシン:1回の服用で完了
・ドキシサイクリン:7日間の服用
・レボフロキサシン:5〜7日間の服用
治療期間中は、性行為を控えることが重要です。これは、治療中に感染を広げる可能性があるためです。
3.治癒確認
治療終了後、通常2〜4週間経過してから治癒確認検査を行います。この期間は、偽陽性の結果を避けるために必要です。米国疾病管理予防センター(CDC)のガイドラインでは治療後4週間での検査を推奨しています。
治癒確認の検査方法として、尿または膣スワブを使用して検体を採取し、核酸増強検査(NAAT)を行います。
治癒確認検査で陰性が確認されるまでは、性行為を控えることが推奨されます。これは、再感染や感染の拡大を防ぐために重要です。
4.再感染予防
クラミジアの再感染率は高く、治療後6ヶ月以内に約10〜20%の患者が再感染するとの報告があります。再感染を防ぐためには、以下の対策が重要です
・パートナーの同時治療:性行為パートナーも同時に検査・治療を受けることが推奨されます。これにより、パートナー間での再感染のリスクを減らすことができます。
・安全な性行為の実践:コンドームの正しい使用や、新しい性的パートナーとの関係を持つ前の検査など、安全な性行為の実践が重要です。
・定期的な検査:性的に活発な若年層は、年1回のクラミジア検査が推奨されています。
クラミジアの治療に対する注意点と合併症予防
クラミジアは適切な治療を受けることで完治が可能ですが、治療には注意点があり、合併症のリスクも考慮する必要があります。以下に、治療の注意点と合併症予防について詳しく説明します。
治療に関する注意点
・医師の診察と処方が必須:クラミジアの治療薬は処方箋が必要な医療用医薬品です。市販されていないため、必ず医療機関を受診し、医師の診断と処方を受ける必要があります。
・インターネットでの購入は危険:オンラインで購入可能な治療薬には、品質や安全性が保証されていないものがあります。これらの薬の使用は、健康被害のリスクがあるため避けるべきです。
・処方された薬の正しい服用:医師の指示通りに薬を服用することが重要です。治療期間を守り、途中で中断せずに最後まで服用することで、効果的な治療が可能になります。
・パートナーの同時治療:クラミジアの再感染を防ぐため、性的パートナーも同時に検査と治療を受けることが推奨されます。
・治療中の性行為の禁止:治療期間中は性行為を控えることが重要です。これにより、パートナーへの感染や再感染のリスクを減らすことができます。
クラミジア感染の合併症と予防策
クラミジアは適切に治療しないと、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。特に女性では、将来の妊娠にも影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
女性特有の合併症
女性特有の合併症には以下の3つが挙げられます。
・骨盤内炎症性疾患(PID):クラミジア感染が上行性に広がり、子宮や卵管に炎症を引き起こす病気です。症状には腹痛、発熱、性交時の痛みなどがあります。PIDは不妊のリスク因子となるため、早期発見・早期治療が重要です。
・不妊症:PIDにより卵管が炎症を起こし、癒着が生じると、卵子の通過が妨げられ、不妊の原因となる可能性があります。
・子宮外妊娠:卵管の損傷により、受精卵が子宮以外の場所(主に卵管)で着床してしまう危険性があります。子宮外妊娠は生命を脅かす可能性のある緊急事態であり、早期発見が重要です。
男性特有の合併症
男性特有の合併症には精巣上体炎が挙げられます。精巣上体炎では、感染が精巣上体に広がり、痛みや腫れを引き起こすことがあります。重症化すると不妊の原因となる可能性があります。
男女共通の合併症
男女共通の合併症には以下の2つが挙げられます。
・尿道炎:クラミジア感染により尿道に炎症が起こり、排尿時の痛みや違和感、尿道からの分泌物などの症状が現れます。
・反応性関節炎:クラミジア感染が引き金となり、関節に炎症が起こることがあります。これにより関節の痛みや腫れが現れます。
クラミジアの予防策
クラミジアは一度感染しても免疫が獲得されにくく、再感染のリスクが高い性感染症です。そのため、以下の予防策を継続的に実践することが重要です。
・コンドームの正しい使用:性行為の際に正しくコンドームを使用することで、クラミジアを含む多くの性感染症のリスクを減らせます。
・定期的な検査:特に複数のパートナーと性行為をする場合、定期的な検査が重要です。CDCは、25歳未満の性的に活発な女性や、リスクの高い人々に対して、年1回のクラミジア検査を推奨しています。
・パートナーとのオープンなコミュニケーション:性感染症について率直に話し合い、互いの性の健康状態を共有することが大切です。これにより、感染リスクの低減と早期発見・治療につながります。
・性的パートナーの数を制限する:複数のパートナーとの性的接触は感染リスクを高めます。長期的で一対一の関係を維持すれば、クラミジアを含む性感染症のリスクを減らすことができます。
・適切な衛生管理:性器周辺の清潔を保つことも、感染リスクの低減に役立ちます。ただし、過度の洗浄は粘膜を傷つける可能性があるため注意が必要です。
クラミジア予防の相談窓口と支援サービス
クラミジアは適切な予防策と早期発見・治療により、感染リスクを低減できる性感染症です。しかし、多くの人々が羞恥心や知識不足から、必要な支援を求めることをためらっています。
ここでは、クラミジア予防に関する相談窓口と利用可能な支援サービスについて詳しく説明します。
医療機関での相談
医療機関、特に産婦人科や泌尿器科、性感染症専門クリニックは、クラミジア予防に関する最も信頼できる相談窓口です。これらの医療機関では、以下のサービスを提供しています。
・専門医による個別相談
・クラミジア検査(尿検査や膣スワブ検査など)
・適切な治療の提供
・予防法に関する詳細な情報提供
・パートナー通知支援
医療機関を選ぶ際は、性感染症の診療経験が豊富な医師がいるかどうかを確認することが重要です。また、プライバシーに配慮した環境で相談できるかどうかも重要な選択基準となります。
保健所での相談と検査
多くの保健所では、クラミジアを含む性感染症に関する相談や検査サービスを提供しています。保健所の利点は以下のとおりです。
・無料または低料金でのサービス提供
・匿名での相談や検査が可能
・専門の保健師による相談サービス
・地域の医療機関や支援団体との連携
電話相談サービス
多くの地域や団体が、クラミジアを含む性感染症に関する電話相談サービスを提供しています。これらのサービスの特徴は以下のとおりです。
・匿名での相談が可能
・専門のカウンセラーによる対応
・24時間対応のホットラインもある
・多言語対応のサービスも増加中
オンライン相談サービス
近年、インターネットを通じたオンライン相談サービスも増加しています。これらのサービスの利点を以下に挙げています。
・24時間いつでも相談可能
・チャットやビデオ通話による相談
・匿名性が高い
・若年層にとってアクセスしやすい
ただし、オンライン相談を利用する際は、信頼できる機関や専門家が運営しているサービスを選ぶことが重要です。
NPOや支援団体による相談サービス
性の健康や権利に関するNPOや支援団体も、クラミジア予防に関する相談サービスを提供しています。これらの団体の特徴は以下のとおりです。
・当事者や専門家による支援
・ピアカウンセリングの提供
・最新の情報や資源の提供
・アウトリーチ活動による支援
クラミジア予防に関する相談は、単に感染予防だけでなく、総合的な性の健康管理につながります。これらの相談窓口を積極的に活用することで、自身の健康を守るだけでなく、パートナーや社会全体の健康にも貢献できます。
一人で悩まず、専門家のサポートを受けることが、クラミジア予防の第一歩となります。
まとめ
クラミジアは最も一般的な性感染症の一つで、若者を中心に感染が広がっています。主な予防法は以下のとおりです。
・コンドームの正しい使用
・性交渉の相手数を減らす
・定期的な検査
自覚症状が乏しいため、早期発見・早期治療が重要です。感染が疑われる場合は速やかに医療機関を受診しましょう。正しい知識と予防策を実践すれば、クラミジアのリスクを減らすことができます。自分自身とパートナーの健康を守るため、安全な性生活を心がけましょう。
参考文献
記事監修者
天野方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。 日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。