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新宿予防クリニックブログマンジャロとトルリシティの違いは?作用機序と効果を医師が比較解説

マンジャロとトルリシティの違いは?作用機序と効果を医師が比較解説

糖尿病治療で使われる「マンジャロ(チルゼパチド)」と「トルリシティ(デュラグルチド)」は、いずれも週1回の自己注射薬です。2つの薬は作用機序が大きく異なり、使用の選択が治療効果に影響を与える可能性があります。日本人を対象とした臨床試験では、血糖コントロールや体重減少の面で両薬剤に差がみられました。

この記事では、作用機序の違いをはじめ、臨床データや費用面も含めて医師が比較・解説します。より適した治療薬を選ぶための判断材料として活用してください。

新宿予防クリニックでは、医師が体質や生活習慣、ライフスタイルの目標に応じてマンジャロを用いた医療ダイエットをサポートしています。まずはお気軽にご相談ください。
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マンジャロとトルリシティの基本的な違い

マンジャロとトルリシティの基本的な違いは、以下のとおりです。

  • 作用機序:GIP+GLP-1作動のマンジャロ・GLP-1単独のトルリシティ
  • 血糖コントロール・体重減少効果
  • 使用実績

作用機序:GIP+GLP-1作動のマンジャロ・GLP-1単独のトルリシティ

マンジャロとトルリシティの大きな違いは、作用機序(薬が体内でどのように作用するか)という仕組みにあります。私たちが食事をとると、小腸から「インクレチン」と呼ばれるホルモンが分泌されます。インクレチンは、血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の分泌を促す働きを持ち、糖尿病治療において重要な役割を担っています。

インクレチンには「GLP-1」と「GIP」という2種類のホルモンが存在します。これらに対する作用の違いにより、トルリシティとマンジャロの特徴が異なります。以下の表で、作用機序の違いを比較しています。

薬の種類働きかけるホルモン特徴
マンジャロGIPとGLP-1(2種類)2つのホルモンに同時に働きかける「デュアルアクション」
トルリシティGLP-1(1種類)1つのホルモンに働きかける「シングルアクション」

血糖コントロール・体重減少効果

トルリシティとマンジャロは、作用するホルモンの数が異なるため、血糖値の改善や体重減少効果にも違いが見られます。GLP-1やGIPにはインスリンの分泌を促す以外の作用もあります。胃の運動を抑えて満腹感を持続させたり、脳の食欲中枢に作用して食欲を抑制させたりできます。

マンジャロは、2つのホルモン(GLP-1/GIP)に同時に作用する点から、より大きな体重減少効果が得られたとする臨床試験結果報告されています。個人差がありますが、より高い血糖コントロールや体重減少を目標とする場合には、マンジャロが選択肢の一つとなる可能性があります。

マンジャロの効果がいつ頃から現れるのか、また体重減少のメカニズムや注意点については、以下の記事で医師が詳しく解説しています。治療を始める前の参考にしてください。
>>マンジャロはいつから効果が出る?痩せる理由と注意点を医師が解説

使用実績

薬を選ぶ際には効果だけでなく、安全性やこれまでの使用実績も重要な判断材料となります。トルリシティは、マンジャロよりも先に登場した薬で、長年にわたって世界中の多くの糖尿病患者さんの治療に使われてきました。

マンジャロは比較的新しい薬で、これまでの治療薬の知見を活かして開発されており、高い効果が注目されています。長期的な使用実績はまだ限られており、今後のデータの蓄積が期待されます。吐き気などの消化器症状の副作用には個人差があります。

臨床データで比較する効果・副作用

マンジャロとトルリシティの臨床試験データをもとに、主な効果や副作用について比較します。

  • HbA1c改善効果
  • 体重減少効果
  • 消化器症状などの副作用
  • 低血糖リスク

HbA1c改善効果

HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、過去1〜2か月間の血糖値の平均点を表しており、糖尿病のコントロール状態を把握できます。日本人を対象に行われた「SURPASS J-mono試験」では、マンジャロとトルリシティを52週間使用した後のHbA1cの変化量が比較されました。結果は、以下の表のとおりです。

薬剤の種類(週1回投与)HbA1cの変化量(平均値)
マンジャロ(15mg)約2.8%
トルリシティ(0.75mg)約1.3%

試験では、マンジャロのほうがトルリシティよりも、HbA1cの低下幅が大きい傾向が示されました。マンジャロの「デュアルアクション」が結果に影響を与えていると考えられています。

体重減少効果

マンジャロとトルリシティは、どちらも食欲を抑える働きがあり、体重減少が期待できます。糖尿病治療では、血糖値の改善と同様に、適正な体重管理も重要な要素です。体重のコントロールは、将来の心臓病や脳卒中などの合併症のリスクを減らすことにもつながります。

先ほどと同じ日本人を対象とした臨床試験では、体重の変化について以下の結果が示されました。

薬剤の種類(週1回投与)体重の変化量(平均値)
マンジャロ(15mg)約10.7kg
トルリシティ(0.75mg)約0.5kg

マンジャロはトルリシティと比較して、より大きな体重減少効果を示しています。体重変化量の違いは、マンジャロが持つGIPへの作用が大きく関わっていると考えられています。GIPは、GLP-1の作用に加えて、脳の食欲中枢や脂肪の代謝にも影響を与えるため、体重減少効果の違いに寄与している可能性があります。

重要な点として、マンジャロやトルリシティは体重減少を目的とした薬ではありません。糖尿病治療薬であり、食事療法や運動療法と組み合わせることで、健康的な体づくりを目指すことが基本です。

消化器症状などの副作用

マンジャロやトルリシティを使った治療で、使い始めの時期に消化器系の副作用を感じることがあります。臨床試験でも、以下の症状が報告されています。

  • 吐き気(悪心)
  • 便秘
  • 下痢
  • 食欲の低下
  • 胃のむかつき
  • お腹の張り

副作用は、マンジャロとトルリシティのどちらでも起こる可能性があります。多くの場合、薬を使い続けるうちに体が慣れ、症状は自然と軽くなることがあります。症状が続いて日常生活に影響が出るほどつらい場合は我慢せず、すぐに主治医や薬剤師に相談することが大切です。

食事を一度にたくさん摂らずに小分けにしたり、ゆっくりよく噛んで食べたりする工夫で、消化器症状の緩和に役立つことがあります。マンジャロ治療に伴う副作用の特徴や、症状が出たときの適切な対処法については、以下の記事で医師が詳しく解説しています。
>>マンジャロの副作用とは?頻度や注意すべき症状・対処法を解説

低血糖リスク

糖尿病の薬で注意したい副作用の一つに「低血糖」があります。低血糖とは、血液中のブドウ糖が下がりすぎてしまい、体に不調が起きる状態のことです。低血糖の主な初期症状は、以下のとおりです。

  • 冷や汗が出る
  • 手や指がふるえる
  • 動悸がする(ドキドキする)
  • 強い空腹感を感じる

マンジャロとトルリシティは、血糖値が高いときにだけインスリン分泌を促す作用があります。そのため単独で使用する場合、重度の低血糖を起こすリスクは比較的低いとされています。以下のような状況では、低血糖が起こる可能性があるため、注意が必要です。

  • 他の糖尿病治療薬(特にSU薬やインスリン注射)を併用している場合
  • 食事の量が極端に少なかったり、食事を抜いたりした場合
  • 普段より激しい運動を行った場合

低血糖の可能性があると感じたときに、すぐ対応できるようブドウ糖や砂糖が入ったジュースなどを携帯することが推奨されます。治療を始める前には、低血糖の症状と対処法について、医師や薬剤師から詳しい説明を受けてください。

費用・使いやすさの比較

マンジャロとトルリシティの費用と使いやすさについて、以下の3つを解説します。

  • 自己注射デバイスの形状・操作性
  • 自己負担額の目安(保険適用の場合)
  • 注射を打ち忘れた場合の対処法

自己注射デバイスの形状・操作性

マンジャロとトルリシティは、患者さんが安心して簡単に使えるように工夫がされた、ペン型の注射器(デバイス)を使います。共通点は、以下のとおりです。

  • 針が見えない安心設計
  • ボタンを押すだけの簡単操作
  • 毎回清潔な使い切りタイプ

針はデバイス内部に収納されており、肌に押し当てるまで見えない構造です。ボタンを押すと薬の注入が自動で始まり、完了後「カチッ」と音がなる仕組みです。一度使った注射器はそのまま処分して、毎回新しいものを使うため、衛生的で管理も簡単です。

どちらも数ステップで注射が完了するように設計されています。手順を以下の表にまとめました。

マンジャロ(アテオス)トルリシティ(オートインジェクター)
ステップ1キャップを外し、底のリングを回してロックを解除するキャップを外す
ステップ2お腹などにしっかり当て、注入ボタンを押すお腹などにしっかり当て、注入ボタンを押す
ステップ32回目のカチッという音が聞こえたら注入完了カチッという音が聞こえ、灰色の部品が見えたら注入完了

マンジャロには「ロック解除」という一手間がありますが、誤ってボタンを押してしまうことを防ぐための安全機能です。

自己負担額の目安(保険適用の場合)

マンジャロとトルリシティは、どちらも「2型糖尿病」の治療薬として使う場合に、健康保険が適用されます。患者さんが支払う金額(自己負担額)は、国が定めた「薬価」と、患者さんの保険証に書かれている負担割合(1〜3割)によって決まります。

マンジャロの保険適用条件や、自己負担額の詳細、自由診療との違いについては以下の記事で詳しく解説しています。治療費の目安を知る際の参考にしてください。
>>マンジャロは保険適用される?適用基準から月額費用まで専門医が徹底解説

注射を打ち忘れた場合の対処法

マンジャロとトルリシティを打ち忘れた場合の対処法は、次の注射までの時間によって異なります。それぞれ以下の表にまとめています。

薬剤名次の注射予定日までの間隔対応方法
マンジャロ4日(96時間)以上ある気づいた時点で1回分を注射し、以降はいつものスケジュールに戻す
4日(96時間)未満忘れた分は注射せず、次の予定日に1回分を注射する
トルリシティ3日(72時間)以上ある気づいた時点で1回分を注射し、以降は普段のペースで続ける
3日(72時間)未満忘れた分は注射せず、次の予定日に1回分を注射

忘れた分をまとめて2回分注射することは避けてください。薬が効きすぎて、低血糖などの副作用につながる可能性があります。注射の打ち忘れや使用方法に不安がある場合は、自己判断せず、医師や薬剤師に相談してください。

医師が考える使い分けのポイント

医師がどのような視点で薬を使い分けているのか、以下のポイントを解説します。

  • 患者さんの状態や目的に応じた薬の選び方
  • 両薬剤間の切り替えで注意すべき点

患者さんの状態や目的に応じた薬の選び方

医師が薬剤を選択する際には、患者さんの血糖コントロール状況や治療の優先事項、副作用への懸念などを総合的に判断します。マンジャロが選択されやすいケースは、以下のとおりです。

  • より積極的な血糖コントロールを目指している
  • 体重管理を治療目標の一つとして重視している
  • これまでの治療で十分な効果が得られなかった

トルリシティは以下のようなケースで選択されやすいです。

  • 副作用(特に胃腸症状)に対して不安がある
  • 比較的穏やかな作用で治療をスタートしたい
  • 長期的な使用実績を重視したい

最終的には、それぞれの特徴と患者さんの希望や生活スタイルを照らし合わせて、医師と相談のうえで決定されます。

両薬剤間の切り替えで注意すべき点

治療の途中で、薬の変更を検討することは珍しくありません。医師の判断のもと、安全に切り替えることは可能ですが、以下の点に注意しましょう。

  • 自己判断での切り替えは避ける
  • 副作用に改めて注意する
  • 医師による慎重な用量調整が必要

自己判断で薬をやめたり変更したりすることは、血糖値の急激な変動を引き起こし、体に大きな負担をかける可能性があります。薬を切り替えた直後は、体が新しい薬に慣れるための時間が必要です。吐き気や下痢などの消化器症状が一時的に現れることもあります。

ほとんどの場合は徐々に落ち着きますが、症状がつらい場合は我慢せず、すぐに医師や薬剤師に相談してください。

まとめ

糖尿病治療薬であるマンジャロとトルリシティはどちらも週1回の自己注射で治療を行う薬です。マンジャロとトルリシティには、以下の特徴があります。

  • マンジャロ:2種類のホルモンに作用することで、血糖値や体重改善が期待できる
  • トルリシティ:長年の豊富な使用実績と、比較的穏やかな作用で、副作用への不安が少なく、着実に治療を進められる

どちらが適しているかは、ご自身の体の状態や治療目標によって異なります。自己判断で薬を選ぶことはせず、まずは主治医に希望や不安な気持ちを相談し、最適な治療法を見つけていきましょう。

新宿予防クリニックでは、医師が一人ひとりの体質・生活習慣・目標に合わせてマンジャロを用いたGLP-1治療をサポートしています。お悩みの方はお気軽にご相談ください。
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参考文献