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HIV感染が心配なあなたへおすすめのPEP療法!緊急予防法の効果・実施方法・副作用は?
HIVに感染した可能性がある場合、多くの人が不安を感じるでしょう。HIV感染は早期発見と適切な治療が重要ですが、感染の可能性を心配しながら過ごす日々は心理的な負担が大きいものです。
本記事では、HIV感染予防の緊急措置であるPEP療法について詳しく解説します。PEP療法の効果、実施方法、副作用などをわかりやすく説明するとともに、HIV検査や日常的な予防法といった関連情報もご紹介します。
HIV感染への不安を軽減し、より前向きな毎日を送るための参考にしましょう。
PEP療法とはHIV感染リスクに対する緊急予防措置
PEP療法は、HIVに感染する可能性のある行為の後に行う緊急予防措置です。
Post-Exposure Prophylaxisの略で、抗HIV薬を使用してウイルスの増殖を抑制し、感染を防ぎます。できるだけ早く治療を開始することが重要で、正しく実施すれば高い予防効果が期待できます。
ここでは、PEP療法の効果、特徴、実施方法、副作用について詳しく解説します。
PEP療法の効果
PEP療法は、HIVに感染した可能性がある場合に行う緊急予防措置です。PEPは「Post-Exposure Prophylaxis(曝露後予防)」の略称で、HIV感染リスクのある行為から72時間以内に開始すれば、99%以上の確率で感染を防ぐことができます。
特に、暴露後2時間以内に開始すると効果が高くなります。 ただし、この高い効果を得るために、処方された薬を28日間確実に飲み続けることが大切です。
また、PEP療法はHIV以外の性感染症を予防する効果はないため、コンドームの使用など他の予防策と併用することが重要です。
PEP療法の実施方法
PEP療法の実施方法は以下のとおりです。
PEP療法開始時期
・HIV感染の可能性がある行為から72時間以内に開始する必要があります。
・できるだけ早く(理想的には2時間以内)開始するほど効果が高くなります。
服薬方法
・抗HIV薬を1日1回、28日間連続して服用します。
・毎日同じ時間に摂取することが重要です。
実施の流れ
1.問診:コンドームの有無や経過時間など性行為の状況に加え、現在の健康状態、服薬状況などを医師に伝えます。
2.検査:血液検査などを行い、HIV感染の有無を確認します。
3.PEP療法の開始:PEP療法が必要な場合、処方箋を受け取り、薬を受け取ります。
4.服用:医師の指示に従い、必ず毎日薬を服用します。
5.定期的な検査:療法開始後も、定期的に医療機関を受診し、HIV感染の有無を確認します。
PEP療法は、HIV感染のリスクを減らす有効な手段ですが、100%感染を防げるわけではありません。医師と相談を行い、自身の状況に適した対応をとることが重要です。
PEP療法の副作用
短期的な副作用として、吐き気、腹痛、下痢、頭痛、疲労感、めまい、不眠、いらいら感などが報告されています。これらの症状は一般的に軽度で、治療開始後数日で軽減または消失することが多いです。
副作用を和らげるためには、食後に薬を服用したり、十分な水分摂取をするようにしましょう。
長期的な副作用としては、腎機能障害や骨密度の減少が挙げられますが、28日間という当面の治療では、これらのリスクは比較的低いと考えられています。
重要なのは、副作用が現れた場合でも、自己判断で服用を中止せず、必ず担当医に相談しましょう。
PEP療法の処方を受ける条件
PEP療法を受けるためには、3つの条件があります。
・HIVに感染していない、または感染不明である場合
・性行為などのHIVに感染する可能性のある行為から経過時間が72時間以内である場合
・医師の診察を受け、PEP療法が必要だと判断された場合
以上の条件に少しでも当てはまる方は、すぐに医療機関を受診し、医師に相談することをおすすめします。
PEP療法の費用
PEP療法の費用は医療機関や処方される薬の種類によって異なりますが、全額自己負担の場合、数万円程度かかることがあります。ただし、以下のような場合には費用が軽減される可能性があります。
・公的医療保険が適用される場合
・犯罪被害者等医療費給付制度の対象となる場合
具体的な費用については、受診する医療機関に確認することをおすすめします。経済的な理由でPEP療法を受けられない場合は、医療ソーシャルワーカーなどに相談することも検討してください。
PEP療法の効果的な服用方法と注意点
PEP療法は、72時間以内に治療を始めることで効果が期待できます。療法開始後では、3つのポイントに注意することで、PEP療法の効果を最大限に高められます。ここでは、PEP療法の効果的な服用方法と注意点についてまとめます。
PEP療法の効果的な服用方法
PEP療法の効果的な服用方法は以下のとおりです。
・医師の指示に従い、正しく服用する
勝手に服用を中断し、服用量を変更することは、効果を減弱させ薬剤耐性のあるウイルスを生み出す可能性が高いので、とても危険です。
・継続して服用する
時間が経つにつれ、効果が薄れてしまうため、毎日忘れず飲み続けることが大事です。毎日決まった時間にアラームを設定したり、お薬手帳を活用すると飲み忘れを防ぐことができます。
万が一、飲み忘れてしまった場合は、すぐに医療機関に相談してください。
・服用期間中は、他のHIV予防策と併用する
PEP療法は、HIVを100%予防することはできないので、コンドームをはじめとした、ほかのHIV予防策と併用することをおすすめします。複数の予防策を組み合わせることで、より効果的にリスクを減らすことができます。
PEP療法の注意点
PEP療法の注意点は以下のとおりです。
・速やかに開始する: HIV 暴露後 72 時間以内、できれば 2 時間以内に開始する必要があります。
・継続的な服用: 28日間、毎日決まった時間に抗HIV薬を飲むことが大切です。
・副作用への対応: 吐き気や頭痛などの副作用が生じる可能性があるため、医師と相談しながら対処します。
・定期的な検査: 治療開始時、終了時、その後も定期的にHIV検査や他の検査を受ける必要があります。
・他の性感染症への注意: PEPはHIV以外の性感染症を予防しないため、コンドームの使用など他の予防法も併用しましょう。
・自己判断での中止禁止:副作用があっても自己判断で服用を中止せず、必ず医師に相談してください。
HIV検査を受けるタイミングとPEP療法以外の予防法
PEP療法はHIVに感染した可能性のある人向けの緊急予防措置です。万が一のリスクに備えてPEP療法についての知識を持っておくことが大切ですが、HIVに感染するリスクを下げるためには、普段から予防対策を行ったり、定期的なHIV検査を受けたりすることも大切です。
ここでは、HIV検査を受けるタイミングやPEP療法以外のHIV予防法についてまとめます。
HIV検査を受けるタイミング
「HIV検査」は、HIVの感染を調べる検査であり、血液検査や唾液検査など、複数の検査方法があります。
感染の有無が気になり、早急に検査をすぐ検査を受けたい方も多いと思います。 HIV検査には「ウィンドウ期間」という期間があり、HIVに感染してから検査で正しく陽性反応が出るまでの期間のことを言います。
HIVウイルスが増加している最中であり、検査で検出できるようになるまで時間がかかるので、検査を受ける時期が早すぎると感染していても陰性と判定されてしまう可能性が高くなってしまいます。HIV検査を受けるタイミングは大きく分けて以下の2つあります。
・HIVに感染する可能性の高い出来事の後
コンドームが破れた性行為や、HIV感染者との注射器共有など感染リスクが高い出来事の場合です。ウィンドウ期間は、感染の可能性がある日から3週間後の「第4世代検査(抗原抗体同時検査)」と感染の可能性のある日から1習慣後の「核酸増幅検査(NAT)」の2種類あります。
早くHIV検査を受けることが大事ですが、ウィンドウ期間を考慮することも費用を抑えるために重要なことです。上記の検査は、以前の検査方法よりウィンドウ期間が短くなっているため、早く検査結果を知ることが可能です。
・定期的なHIV検査
複数の性的パートナーがいる場合や、パートナーが注射薬物使用者である場合は、定期的なHIV検査を受けることが推奨されます。定期的なHIV検査は、早期発見、早期治療につながり、感染拡大防止の役割も果たします。
PEP療法以外のHIV予防法|PrEPについて
PrEP(Pre-Exposure Prophylaxis:事前曝露予防)は、HIVに感染していない人が感染リスクのある行為の前に予防薬を服用する方法です。PrEPは以下のような特徴があります。
・HIVに感染していない人が、HIV感染リスクのある行為の前から抗HIV薬を服用してHIV感染を予防できる。
・正しく服用すれば、性行為によるHIV感染リスクを99%以上軽減できる高い予防効果がある。
・毎日服用する「デイリーPrEP」と、性行為の前後に集中的に服用する「オンデマンドPrEP」の2種類の服用方法がある。
・定期的な検査と医師の診察が必要。
どちらの方法が適しているかは、個人の状況や生活スタイルによって異なるため、医師と相談の上で決定することが重要です。
まとめ
PEP療法は、HIV感染者とコンドームを装着せず性交渉を行った後、72時間以内にPEPを服用することで99%以上の予防効果を期待できます。HIV感染予防には、PEP療法やPrEPなどの医学的な方法だけでなく、日常的な予防策も重要です。以下のような予防策を組み合わせることで、より効果的にHIV感染リスクを低減できます。
・コンドームの正しい使用
・ 注射器の共有を避ける
・ 定期的なHIV検査の受診
・ パートナーとのオープンなコミュニケーション
・ 性感染症の予防と早期治療
HIV感染への不安がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な対応を取ることが大切です。また、HIV感染症に関する正しい知識を持ち、偏見や差別のない社会づくりに貢献することも、私たち一人ひとりの役割です。
参考文献
記事監修者
天野方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。 日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。